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Home >  在宅診療の教科書 >  在宅医療を始めるための準備をする②

在宅医療を始めるための準備をする②


在宅医療を始めるにあたって、自宅内の環境を見直すのも重要なポイントです。

今回は、レンタルできる福祉用具の種類や、片付けのポイントなど、具体的な内容についてお伝えします。

▷▷▷在宅医療を始めるための準備をする①はこちらから▷▷▷

「介護用ベッド」を用意する

在宅医療を始めるにあたり、寝具として介護用ベッドを用意することをおすすめします。

布団の場合は高さがないため、起き上がるときや寝るとき、足腰に大きな負荷がかかります。
寝起きのときにバランスを崩して転倒する恐れもあり、要介護者の身体を支えて介助をする家族の負担も少なくありません。
その点、介護用ベッドであれば、上体を起こして足を下ろせば、腰掛けた姿勢から立つことができます。
立ち上がりの補助になる手すりも付けられるので、ベッドから車椅子、ポータブルトイレなどへの移乗も楽になります。

要介護度が上がってくると、寝具の上で横になって過ごす時間が長くなりますが、介護用ベッドならば、食事などの際にスイッチ操作で上体を起こし、姿勢を変えることもできます。

介護用ベッドは希望のものを購入してももちろん構いませんが、介護保険でレンタルすることもできます。
利用可能なメーカーや機種、月々のレンタル料は事業者によって異なりますが、月の貸出料の1割または2割の自己負担で利用できます。
ベッドのサイドレールや褥瘡防止クッションといった寝具周りの付属品も、併せてレンタルできます。

介護用ベッド以外にも、介護保険でレンタルできる福祉用具があります。
(下図「介護保険でレンタルする福祉用具」参照)
レンタルを希望するときはケアマネジャーに相談してください。

介護保険でレンタルできる福祉用具

トイレ、浴室の環境にも目配りを

在宅療養では、トイレ=排泄の問題も大切です。

自宅でトイレに移動して座ることができる人の場合、一日に何度も行き来することになるので、トイレ内に手すりを付けて、立ち座りを補助できるようにしておくと安心です。
トイレまで移動するのが難しくなってきたとき、あるいは、夜間だけでも移動を少なくしたいというときは、ベッドの近くにポータブルトイレを置き、そこで済ませるという方法もあります。

また、トイレと併せて浴室も、転倒などのリスクの高い場所です。
要介護度に合わせて浴槽内に手すりを設置するほか、入浴用椅子、浴槽内椅子を用意するなどして安全に入浴できる環境を整えましょう。

ポータブルトイレをはじめとした排泄・入浴にかかわる福祉用具(下図「特定福祉用具の指定5品目」参照)は、介護保険サービスで入手できます。
ただし、レンタルにはなじまないため購入費が支給されます。
支給額の限度は年度(4月~翌年3月)ごとに10万円で、一つの品目につき原則1回です。

特定福祉用具の指定5品目

このほか入浴については、高齢者一人での入浴や家族による介助が不安になってきたときは、介護保険の訪問看護・介護で看護師やホームヘルパーに介助を依頼することもできます。
またデイサービスなどでの施設入浴や、移動入浴車による訪問入浴を利用することもできます。
(詳しくは 介護保険で受けられる介護サービスとは 参照)

排泄・入浴の環境整備やケアをどのようにするかは、やはりケアマネジャーに相談して決めていきましょう。

室内は整理して「安全な環境」に

そのほかにも、室内、特に移動の経路となる場所を把握しておくことが大事です。

高齢者の一人暮らしや高齢夫婦の世帯では、体力が低下して部屋の片付けまで手が回らなくなりがちで、部屋の出入り口付近や廊下などにいろいろなものが置かれていることが良くあります。

そういう状況だと、物をよけて通ろうとしてバランスを崩し、転倒につながることがあります。
特にベッドからリビング、トイレ、浴室への動線には余計なものを置かず、すっきりした状態にしておくべきです。

また、移動中によろけたとき、家具につかまろうとして家具ごと転倒する例もあるので、移動の途中にある家具類は固定しておくと安心です。
厚手の敷物や滑りやすいマット、廊下を横切るコード類も危険なので、片づけておきましょう。

こういったところを点検し、安全な環境で在宅療養を始めてください。

引用元

『1時間でわかる! 家族のための「在宅医療」読本』 著者:内田貞輔(医療法人社団貞栄会 理事長)
発売日:2017年11月2日
出版社:幻冬舎