グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



Home >  在宅診療の教科書 >  「自宅で看取りをする」と決めたときは

「自宅で看取りをする」と決めたときは


実際に看取り場所を検討するタイミングというのは、いわゆる「終末期」が近づいてきた頃が多いと思われます。
終末期というのを改めて定義すると、次のようになります。
「医師の診断に基づいて、心身機能の衰弱が著明で明らかに回復不能な状態であり、かつ近い将来確実に死に至ることが差し迫っている状態」
この終末期に至る過程というのは、病気の種類によっても、ずいぶん様子が異なります。

病気の種類により「最期までの経過」は異なる

日本人の死因の第1位を占めるがんの場合、いわゆる終末期は短い傾向があります。
治療・療養を続けている間は心身の機能は比較的よく保たれていますが、最後の2カ月ぐらいで急速に全身の機能が悪化し、最期に至るケースが多くなっています。
そのため、病院での治療を終えて在宅医療に移行するときに、最初から「自宅で看取りまで」という希望をもって、在宅医療を始める人も少なくありません。

一方、心疾患や脳卒中、慢性呼吸器不全といった臓器の疾患の人の場合は、数年単位で徐々に終末期に至るという例が多くなります。

最初に発作が起きて倒れたときは、家族も慌ててしまいますが、治療やリハビリが奏功すれば、状態はある程度まで回復します。
しかし、何度か発作を繰り返すうちに、全体として徐々に心身の機能が低下していき、2~5年ほどの間に多くの人が最期を迎えます。
こうした疾患の場合は、どこからが終末期かという目安ががんほど明確でないため、家族も治療を続けるのか、看取りを進めるのか、迷いが生じやすいともいえます。

認知症や老衰の場合、さらに長い経過になることもあります。
年々ゆっくりとしたペースで心身の機能低下が続き、数年から場合によっては10年近くの療養を経て、最期に至る例も多くあります。
この場合は家族の介護負担は長くなりますが、その分、看取りについてもじっくり考える時間があるともいえます。

いずれにしても、在宅療養をしている高齢者に「最期まで自宅で過ごしたい」という意思があり、家族もそれをかなえようということで気持ちが固まったときには、在宅医にその意思を伝えてください。医師を中心に、在宅看取りの準備を進めていきます。
また、いったん在宅看取りの方針を決めても、それを変えることはいつでも可能です。ご家族が不安や迷いを感じたときは、いつでも在宅医に相談してください。
何度も話し合いを重ね、ご本人にとっても家族にとっても「納得のできる最期」「満足できる看取り」を考えていくことが大切です。

引用元

『1時間でわかる! 家族のための「在宅医療」読本』 著者:内田貞輔(医療法人社団貞栄会 理事長)
発売日:2017年11月2日
出版社:幻冬舎