在宅看取りが家族の絆を深める①
在宅看取りというのは、遺された家族が先に逝く人から「命を受け継ぐ」またとない貴重な経験です。
在宅看取りをすることで、見送る人たちは、人間の自然な最期というものを実体験として知ることができます。
また在宅療養から看取りまでの過程は、家族の絆やかけがえのない命の大切さを、あらためて心の深いところで感じる機会でもあります。
そのため、在宅看取りを終えたご家族というのは、別れの悲しみの中にあっても、例外なく達成感に満ちた誇らしい表情をされています。
そういうシーンを経験するたびに、私は患者さんとご家族の“人生の充実”に貢献できる在宅医という仕事を選んでよかったと、心から思います。
それでは以下に、在宅看取りを経験されたご家族のエピソードを紹介しましょう。
終末期に至る過程や看取りの状況は家族によってさまざまですが、具体的な経験者の声は、これから在宅医療や在宅看取りを検討しようというご家族にとって参考になることと思います。
在宅看取りをすることで、見送る人たちは、人間の自然な最期というものを実体験として知ることができます。
また在宅療養から看取りまでの過程は、家族の絆やかけがえのない命の大切さを、あらためて心の深いところで感じる機会でもあります。
そのため、在宅看取りを終えたご家族というのは、別れの悲しみの中にあっても、例外なく達成感に満ちた誇らしい表情をされています。
そういうシーンを経験するたびに、私は患者さんとご家族の“人生の充実”に貢献できる在宅医という仕事を選んでよかったと、心から思います。
それでは以下に、在宅看取りを経験されたご家族のエピソードを紹介しましょう。
終末期に至る過程や看取りの状況は家族によってさまざまですが、具体的な経験者の声は、これから在宅医療や在宅看取りを検討しようというご家族にとって参考になることと思います。
ケース1:75歳男性:Iさん 主たる病名:肺がん
肺がんの痛みにも、終末期の不安にもていねいに対応することで穏やかな看取りを実現
Iさんは73歳で肺がんを発症。病院で抗がん剤などの治療を行ってきましたが思うような効果が得られず、化学療法の治療が一段落したところで、自宅での在宅診療も始めたいということで病院から紹介され、当院で診療開始となりました。
訪問当初は日常生活もほとんど問題なくできており、自宅でお気に入りのソファーに座りながら生活を送っておられました。ご夫婦二人の生活で、奥さんとも非常に仲が良く、よく二人でコーヒーを飲んで過ごされていました。
訪問を開始してから3カ月ほど経過したあたりから、徐々にADL(日常生活動作)の低下を認め始めました。加えて食欲不振もあり、身体の衰えをご本人も自覚したのか、診察の際にはだんだんこの先についての不安感を話すようになってきました。
その当時は月に1回程度、かかりつけの総合病院の主治医のところにも通院しており、主治医と私との間でも、Iさんの状態の変化を情報提供書でやり取りしていました。
しかし、通院が困難になってきていることや、ご本人に「自宅で穏やかな最期を迎えたい」という意思が強くあったことなどをふまえ、総合病院の主治医とご家族と相談した結果、総合病院への通院は極力控え、自宅での緩和医療を中心とした生活を送っていく方針に切り替えました。
訪問当初は日常生活もほとんど問題なくできており、自宅でお気に入りのソファーに座りながら生活を送っておられました。ご夫婦二人の生活で、奥さんとも非常に仲が良く、よく二人でコーヒーを飲んで過ごされていました。
訪問を開始してから3カ月ほど経過したあたりから、徐々にADL(日常生活動作)の低下を認め始めました。加えて食欲不振もあり、身体の衰えをご本人も自覚したのか、診察の際にはだんだんこの先についての不安感を話すようになってきました。
その当時は月に1回程度、かかりつけの総合病院の主治医のところにも通院しており、主治医と私との間でも、Iさんの状態の変化を情報提供書でやり取りしていました。
しかし、通院が困難になってきていることや、ご本人に「自宅で穏やかな最期を迎えたい」という意思が強くあったことなどをふまえ、総合病院の主治医とご家族と相談した結果、総合病院への通院は極力控え、自宅での緩和医療を中心とした生活を送っていく方針に切り替えました。
その後、徐々にがんの進行が認められ、呼吸苦や骨転移等が疑われる腰の痛みが現れてきました。
呼吸苦に対しては在宅酸素療法を、痛みに関しては麻薬を使って痛み止めの調整を行いました。痛みはがんの進行とともにだんだん強くなりましたが、内服薬から貼り薬、注射薬というように薬剤の種類や投薬量、投与方法を調節し、ご本人の苦痛をできるだけ取るように努力しました。
そして同時に私たちは、Iさんはもちろん、ご家族も含めて終末期の不安をいかに和らげるか、という点にも力を注ぎました。
夫婦二人暮らしのIさんの場合、介護を担っている奥さんの不安や、介護疲れに対するサポートも非常に重要でした。
経過中には、奥さんが痛みを訴えるご主人を見ているのが辛く「やっぱり病院に行きたい」と発言されたこともあります。また、夜間などに肺に水が溜まって苦しそうなご主人を見ていて、「不安でしかたがない」と訴えられたこともありました。
こうした終末期に向かう人の心身の変化については、プロである私たちも、すべて対応できるわけではありません。
しかし、最大限、奥さんのお話に耳を傾けて不安を受け止め、また今後何が起きてくるのかをしっかりと話し合って、もう一度看取りの方針を確認する_。こうしたコミュニケーションを何度も繰り返しました。
そうしたことで奥さんの不安も薄れ、だんだんと「ご主人を自宅で看取る」という心構えが固まったと感じました。
呼吸苦に対しては在宅酸素療法を、痛みに関しては麻薬を使って痛み止めの調整を行いました。痛みはがんの進行とともにだんだん強くなりましたが、内服薬から貼り薬、注射薬というように薬剤の種類や投薬量、投与方法を調節し、ご本人の苦痛をできるだけ取るように努力しました。
そして同時に私たちは、Iさんはもちろん、ご家族も含めて終末期の不安をいかに和らげるか、という点にも力を注ぎました。
夫婦二人暮らしのIさんの場合、介護を担っている奥さんの不安や、介護疲れに対するサポートも非常に重要でした。
経過中には、奥さんが痛みを訴えるご主人を見ているのが辛く「やっぱり病院に行きたい」と発言されたこともあります。また、夜間などに肺に水が溜まって苦しそうなご主人を見ていて、「不安でしかたがない」と訴えられたこともありました。
こうした終末期に向かう人の心身の変化については、プロである私たちも、すべて対応できるわけではありません。
しかし、最大限、奥さんのお話に耳を傾けて不安を受け止め、また今後何が起きてくるのかをしっかりと話し合って、もう一度看取りの方針を確認する_。こうしたコミュニケーションを何度も繰り返しました。
そうしたことで奥さんの不安も薄れ、だんだんと「ご主人を自宅で看取る」という心構えが固まったと感じました。
Iさんご夫妻には、遠方に住んでいる娘さんたちがいました。娘さんたちは、最初は疎遠でしたが、そうした経過を見るうちに徐々に話し合いにも参加してくれるようになり、最終的には、お父さんを看取るという目標に向け、家族が一丸となっていく様子が手に取るように伝わってきました。
そして、Iさんが食事もほとんど受け付けなくなった最後の2週間ほどは、私たち医療スタッフも毎日のように訪問し、娘さんたちも交代で実家に泊まり込み、奥さんと一緒になって旅立つIさんに懸命に寄り添っておられました。
結果的に家族が一つの絆で結ばれた、Iさんの希望通りのとても穏やかな最期となりました。
私たちも改めて、家族を在宅で看取ることの温かさ、「命をつなぐ」ことの尊さを、経験させてもらったと思っています。
そして、Iさんが食事もほとんど受け付けなくなった最後の2週間ほどは、私たち医療スタッフも毎日のように訪問し、娘さんたちも交代で実家に泊まり込み、奥さんと一緒になって旅立つIさんに懸命に寄り添っておられました。
結果的に家族が一つの絆で結ばれた、Iさんの希望通りのとても穏やかな最期となりました。
私たちも改めて、家族を在宅で看取ることの温かさ、「命をつなぐ」ことの尊さを、経験させてもらったと思っています。
一番印象に残っていること
このIさんの事例でいちばん印象に残っているのは、「最期まで自宅で過ごしたい」というご本人の希望、そして「自宅で見送ってあげたい」というご家族の希望を達成できた、ということです。
また、総合病院の主治医との連携がうまくできたこともあります。
退院前カンファレンスにて病院主治医が、自宅で過ごしたいというIさんの意思をしっかりと認識されていたこと、また状態が変化した際に、主治医との連携を密にすることができたため、自宅での看取りを行う際にもそれが強い助けになりました。
在宅医療は「支える医療」です。
厳密にいえば、在宅医療は病院での治療に比べ、できる医療行為が限られる面もあります。しかし、在宅という場で使える医療資源の中で、どのようにしたら患者さんやご家族が、満足のいく生活や温かい終末期を過ごすことができるのか、そうした点を大事にして診療を行っていくことが大切なのだとあらためて実感しました。
また、総合病院の主治医との連携がうまくできたこともあります。
退院前カンファレンスにて病院主治医が、自宅で過ごしたいというIさんの意思をしっかりと認識されていたこと、また状態が変化した際に、主治医との連携を密にすることができたため、自宅での看取りを行う際にもそれが強い助けになりました。
在宅医療は「支える医療」です。
厳密にいえば、在宅医療は病院での治療に比べ、できる医療行為が限られる面もあります。しかし、在宅という場で使える医療資源の中で、どのようにしたら患者さんやご家族が、満足のいく生活や温かい終末期を過ごすことができるのか、そうした点を大事にして診療を行っていくことが大切なのだとあらためて実感しました。